WTOが抱える課題

WTOは世界が健全に貿易活動を行うことができるよう、諸々の規制をなくして、関税を限りなく低く下げ、地球規模の市場で自由に競争できるようにするということを目的とする機関です。

WTOは掲げる理想の反面、組織自体にも大きな課題を抱えていることをご存知でしょうか。WTOが原則とする条項として、「自由(関税の低減、数量制限の原則禁止)」「無差別(最恵国待遇、内国民待遇)」「多角的通商体制」が挙げられますが、実はこの原則は、特に発展途上国に大きな影響を与えています。

途上国では、弱体な国内産業を保護するための対外規制導入が難しくなったり、公益に関する国内法が次々と退けられるなどの弊害が起き、結果、不公平格差がますます拡がることになっているという指摘があります。

また、WTOの政策決定過程にも重要な問題が指摘されています。WTOの閣議決定には、すべての加盟国の賛同が得られなければ決定がなされない方式である、コンセンサス方式が採用されています。

しかし実際には、会議の事前に、米、EU、日本、カナダと、他の先進国、一部の途上国が参加して、「グリーンルーム方式」という秘密会合が行われ、そこで事実上の決定がなされています。つまり、一部の主要国の思惑だけで多国間協議の結果が決まってしまう恐れがあるということです。

他にも、紛争解決機関(DSB)の閉鎖性や非民主性があり、一部の主要国のみが有利な環境があることは疑いようのない事実です。この事はNGOや途上国の間でも非難の的となっており、強制力を持ったDSBが、「自由貿易の推進」という点に偏りすぎて環境・社会的に悪影響を及ぼすような裁定が行われたこともあります。

自由かつ健全であり、紛争を起こらないよう世界貿易を発展させ、動かしてゆく為にも国際貿易の公平化、健全化、そして多極化した経済構造を作りあげることが、今後のWTOの課題だと言えるでしょう。