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日本の貿易赤字要因を考察

2012年、30年ぶりに貿易赤字を計上した日本の貿易収支はその後も赤字幅を拡大しています。

主な要因としてはヨーロッパや中国向けの輸出が減少、LNGや原油の輸入価格が上昇したことなどが挙げられます。

ただし、有識者などの分析によると日本が貿易赤字となる兆候は数年前からあり、そこには構造的な問題があると指摘されています。

日本の貿易スタイルは好景気の折までは、海外から原材料を輸入して、付加価値を付けて輸出する形が確立されており、純輸出額が10兆円を超える年も少なくありませんでした。

しかし長い景気低迷の間に、製造業を中心にコストも人件費も削減できる海外へと生産拠点を移転する企業が増えました。今まで国内で賄っていた製品・材料を海外で生産・委託生産し、逆輸入することになると、これまで確立してきた日本型の貿易が輸入型に変化してきているわけです。これもグローバル・バリュー・チェーンの一環で、日本製品を作るために輸入が増えるという状況が起きているのです。

また、海外調達の進行による国内生産力の低下が起こり、産業の空洞化現象が起きています。国内における雇用機会の喪失や地域産業の縮小、技術ノウハウ、

人的資源の流出など、懸念される事項は多く深刻だと指摘する声も多く聞かれます。海外現地生産を行う企業の割合は現在60%から70%に上昇し、今後さらに増加すると予測されています。

また、現状の貿易相手国についてのリスク分散されていないという指摘もあります。莫大な資源、材料の輸入を一国の資源に頼るのではなく、複数に選んでゆく必要も叫ばれています。これは資源ナショナリズムの台頭により、国際貿易と政治的な駆け引きの関わりが以前よりも強くなっていることの証しでもあります。

日本の貿易事情

日本は貿易立国です。原油・天然ガスなど、生産に関わる様々な資源と、食糧を輸入し、自動車・鉄鋼・半導体、及び電子部品などを輸出しています。このような貿易スタイルを加工貿易と呼ぶこともありますが、今では日本以外にも同様の貿易スタイルを持っている国が増えているので日本の専売特許ではなくなっています。

近年、日本経済の回復が進むなかで「新・日本輸出商品」も台頭し、デジタル家電では薄型テレビ、液晶パネルの大増産、デジタルカメラでは薄型複合化や一眼レフ化、乗用車ではハイブリッド車需要の活況、ステンレス鋼板や油井管など高級鋼材へのシフト、炭素繊維複合材料の航空機や電子機器向け供給など、

量と質両面で企業の海外展開が活発になっています。

アメリカ中央情報局(CIA)資料『the world factbook』を参考にすると、日本における輸出金額と輸入金額を合計した貿易総額は現在で130兆円を超え、世界では第4位です。

ただし、30年にわたって長らく貿易黒字を続けてきた日本ではありますが、財務省の貿易統計によると2012年以降一転し、それ以降は連続して貿易赤字となっています。赤字額は過去最大の6兆9千億円にのぼっています。

円安やアジア経済の成長により、過去2007年までは輸出・輸入ともに右肩上がりで伸びていた貿易収支の推移が、2008年以降、リーマンショックにより純輸出額が大幅に減少。その後、純輸出額は一度回復を見せるものの、2011年に入ると輸入金額が輸出金額を上回り、およそ2兆5千億円の貿易赤字へと転落しています。

世界経済の現状と国際貿易の成長

グローバル・バリュー・チェーンが国際貿易の大きな部分を占めるという状況は今後も続くと予想されており、これが国際貿易額の増大、ひいては世界経済の成長に直接つながると見られています。

しかしその一方で貿易摩擦が国際的な緊張を生むという問題もはらんでいることから、グローバル化した生産プロセスが健全かつ、世界貿易経済の成長へ向かうべく、現在さまざまな機関が支援を行っています。

IMF(国際通貨基金 International Monetary Fund、IMF)によると、2013年の世界経済成長率は、2012年と同じく、3.1%成長数字にとどまると見られています。2014 年の世界経済は,2013 年後半から徐々に回復して 3.8%成長が見込まれています。

この数字だけを見ると、国際間の格差はあるものの世界経済全体は同じようなペースで成長していることが分かります。この数値をそのまま当てはまるとすると、国際貿易額もこれと同じペースで拡大していくと考えるのが普通です。つまり、今後も国際貿易は少なくとも3%以上の成長を続けると見るべきでしょう。

国際貿易の今後も見る際、資源貿易についても今後は拡大が見込まれています。中国など新興国の資源需要は今後も拡大するのが確実ですが、その一方でシェールガス革命による資源産出国の勢力図が大きく変わることも確実視されているため、資源貿易の流れや構図が変わっていくことが国際貿易に与える影響が大きくなっていくことでしょう。

日本、中国の現状とグローバル・バリュー・チェーン

中国の貿易拡大は中でも目覚ましく、貿易総額ではすでに日本を抜いています。

輸出・輸入額は世界第3位であり、貿易黒字・対米黒字も増加し、2000億ドル超となっています。

日本経済についても、近年は回復が進み、薄型や一眼レフカメラなどの新価値を付加したデジタル家電や、ハイブリッド車、高級鋼材、航空機や電子機器向け部品、人的資源供給など、アイデアや質量に富んだ海外輸出展開が活発になってきています。これは日本が最も得意とする分野で成長戦略の中核を占めているものばかりなので、今後も成長軌道は続くでしょう。

先進国のみならず、経済途上国や小さな新興国にもグローバル化の影響は強く見られます。大国同士で完成品を主に取引されていたころは、市場から追いやられていた部品部分の生産について特化した産業も盛んになり、原料や部品、組み立てなどを、複数の国にまたがって行う「メイド・イン・ザ・ワールド」が当たり前となっています。このようにグローバル化された生産プロセスは「グローバル・バリュー・チェーン(GVC)」と呼ばれ、国際貿易の新しい形として定着しています。

国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、現在の世界貿易の80%を、このグローバル・バリュー・チェーンが占めているそうです。

ただし、メリットばかりでは無論無く、各生産について、厳しい基準と妥当な労働条件を満たしたうえで製造されていると保証されている訳ではないことや、グローバル化が引き起こす利益を巡り、特に大国からの思惑と、国益をかけた駆け引きが行われることで、政治的緊張や摩擦が起きているのも事実です。

それが貿易の不公平や労働者への緊張は、戦争の危機をはらんでいると言っても大げさではない時代です。

世界の貿易の現状

2012年以降の世界貿易経済は、2013年まで横ばいに推移し、同年を底に回復を見せています。理由として、一部の新興・開発途上国地域の経済成長が、主要な輸出先である先進国・地域の経済低迷や自国の投資ブーム一巡によって、著しく鈍化したことが関係しています。

それにより、世界経済はやや減速傾向にあったのですが、懸念されたユーロ圏の崩壊や、米国の「財政の崖」からの転落による急激な財政引き締めが回避されたため、危惧されたほど大きな幅にはならなかったというのがもっぱらの見方です。

ただし、2013年の米国の金融緩和の終了観測から、新興・途上国に流入していた投資家の資金について、大幅な引き揚げが起こることも予想され、新興・途上国での株価安・通貨安・インフレなどの可能性も示唆されています。

それら地域での経済成長経済成長について、さらなる鈍化も懸念されており、世界経済全体については予断を許さない状況にあります。

とは言え、世界における国際貿易による、各国国際経済の成長と伸びは年々著しくなっており、これがグローバル化と貿易額の増大につながっています。

インターネットの普及、交通機関の発達によって、国境間・国間の距離と時間が短縮縮小され、益々成長の傾向にあるのは誰もが認識しているところで、これがいわゆる貿易のグローバル化と呼ばれるものです。

現在時点で、世界国別輸出高のトップは3年連続でドイツで、輸入及び輸出の総額については、アメリカが、世界最大規模を占めています。また、石油の高騰により、産油国である中東・アフリカ・ロシアの輸出額増加と、BRICs(頭文字の順にブラジル、ロシア、インド、中国)が、世界貿易に占める割合も拡大傾向にあり、発展途上国の超躍進が目立っています。