TPPの意義

ここまでTPPがニュースの話題になり、政治的にも大きな課題となっていることには、もちろん理由があります。そこにあるのは、とても崇高な国際貿易の発展的な枠組みの構築と、その一方でそれぞれの国が自国の産業を保護したいという思惑との矛盾です。

しかし、それでもTPPを推し進めようとする国々があるのは、なぜでしょうか。

最も大きな理由は、それぞれの国が持つ産業をグローバル市場で展開し、大きな利益を上げるという思惑を実現できるからです。グローバル化の時代というのはそのまま国際的分業の時代であるというイコールの関係にあります。例えば、タイ王国は世界一のエビ生産国です。エビの養殖に特化した産業が発展しており、コスト優位性や生産効率は他国を圧倒しています。タイ王国にしてみれば、このエビ産業でもっと世界に打って出れば大きな利益につながることは明白です。それを可能にしてくれるのがTPPという多国間貿易の枠組みです。関税撤廃を目指しているだけに、世界中に自国の安くて品質の良いエビを輸出できるようになります。

このように、自国に競争力の高い産業がある国にとってTPPはとても強力な貿易支援材料となります。特にTPPに参加を表明している太平洋諸国は経済的な基盤がそれほど強くない国も多く、寄らば大樹の陰というわけではありませんが、このような枠組みに入ってしまうことが国益につながります。

EUは前身となるEC(ヨーロッパ共同体)が目指した姿をかなりのレベルで達成しており、域内の経済発展や効率化に大きく貢献しました。もしEU統合がなければ、今頃欧州諸国は今ほどの影響力を世界に発信することは出来なかったでしょう。TPPには国際貿易だけでなく、そこまでの可能性が秘められているのです。