日米関係からTPPを読み解く

日本にとって、東アジアとアジア太平洋のバランス、特に中国と、アメリカの間の距離感をいかにとるかは重要な問題です。これは多くの識者が指摘している通りで、大多数の日本人も同じ意見を共有していると考えて良いでしょう。

日本の外交を考えると非常に微妙な時期に、このTPP交渉という問題が持ち上がったというのがもっぱらの見方です。公式には認めていませんが、TPPは実質上アメリカが主導し、アメリカの国益を守ることに主眼が置かれた枠組みです。そこにアメリカの軍事的同盟国である日本が加わることは自然のように思われますが、実は他にあるアメリカの同盟国であってもTPP参加を検討すらしていない国はたくさんあります。もちろん太平洋地域にない国も含まれていますので、全ての国々というわけではありませんが。

安全保障上の事情を考えると、日米同盟は現段階で日本外交の基軸となっています。日本が自主防衛という路線を歩まない限り、この関係性は続くでしょう。それを考えると、TPP参加をアメリカから要請された時に日本にそれを断る明確な理由がありません。それが日本の国内産業に打撃を与えるという恐れがあっても、です。

しかもアメリカは、このTPP交渉において日本との同盟関係を再確認したいとの意図を明確に打ち出しています。これは斜め読みすると、「これからもアメリカと同盟関係を維持したければTPPに参加せよ」と恫喝しているようにも見えます。

現在の政権政党である自民党は、本来TPPには反対でした。自民党の大票田である地方の農村部から票が逃げてしまうことを恐れた上での政策です。しかし、民主党政権時代に当時の菅首相がいきなりTPP参加への検討を打ち上げてしまったため政策課題となり、政権奪回後もそれが続いているという状況です。

国益を守れないのであれば撤退するとは言うものの、それはおそらくお題目でしょう。結局はアメリカに押し切られてTPPに参加するのではないかというのが大方の見方です。