平成17年度 事 業 報 告
財団法人国際貿易投資研究所
公正貿易センター
平成17年は12月のWTO香港閣僚会議に向けてドーハラウンドの交渉が鋭意進められた年であった。 5月から7月にかけてOECD閣僚会議やAPEC貿易大臣会議等において交渉の進展を図るべく交渉が重ねられた。
9月1日にWTO事務局長がスパチャイ博士からラミー新事務局長に交替し、新たなリーダーシップのもと香港会議に向けて主要国会議、種々のグループ国会合が数多く開催され、交渉が本格化した。
その結果、香港閣僚会議では閣僚宣言が採択され、農業交渉等の主要なラウンド交渉の新たな目標期日が設定された。
1995年に発足したWTOは10周年を迎え、WTO上級委員会委員の発議により、それぞれの出身国において、WTO 10周年記念国際会議を開催することとなった。
3月イタリア、5月ブラジル、10月東京、2006年2月エジプト、4月米国での開催が決まり、東京会議組織委員会の委員長を谷口安平WTO上級委員会議長、事務局を公正貿易センターが
担当し、10月25 〜 27日に国連大学国際会議場にて、スパチャイ博士、ジャクソン教授等の著名人をはじめ、アジア、欧米、WTO等から多くの専門家を招聘して、WTO紛争解決、ドーハラウンド交渉、アジア・APECの地域経済統合について熱心かつ有意義な発表と討論を行った。
東アジアではASEANを軸にEPA(経済連携協定)、FTA(自由貿易協定)などの地域経済統合の動きが活発化しており、東アジア共同体に向けた議論も本格化してきた。
わが国もシンガポールとのEPA協定締結に続きマレーシアと署名、フィリピン、タイと大筋合意し、インドネシアとの交渉が開始された。 ASEAN全体との包括的経済連携の交渉も行われている。
更にチリとの交渉を開始し、インド、豪州、スイス等との共同研究会合を開催しているが、韓国との交渉は中断している。 わが国と相手国間の貿易・投資の拡大、日系進出企業の円滑な事業展開には早期の協定締結が望まれるが、増加する協定間の整合性を確保し、かつWTO協定との整合性を保った協定を実現する必要があり、わが国が多国間及び2国間・地域通商協定を重層的に志向する上で重要な課題となっている。
アンチダンピング措置の発動は、従来から多かった米国、EU、カナダ、豪州に加えて近年は中国、インドなどによる発動が増えてきている。 公正貿易センターではアジア諸国・地域のアンチダンピング制度と運用に関する実態調査を行い報告書にまとめた。
わが国はWTOキャパシティビルディングの一環としてWTO協定実施能力向上の為に途上国を積極的に支援している。 公正貿易センターでは、JICA(国際協力機構)の委託を受けて「WTO協定・紛争解決了解の運用」と「アゼルバイジャン・カザフスタンWTO加盟支援」の2つの研修を実施した。
また、効果的なキャパシティビルディングの実施を目指して「貿易投資に関する途上国支援研究会」を開催した。
上記を踏まえ、実施した事業内容は以下の通りである。
なお、調査研究事業の(4)〜(8)、情報及び資料の収集・提供事業の多くの部分並びに啓発普及事業は、競輪の補助金を受けて行ったものである。
I.調査研究事業
わが国の主要貿易、投資相手国による不公正な貿易慣行、法制、政策及びWTO紛争解決手続等に関して学界、実業界、法曹界等の有識者を委員に委託し、経済産業省をはじめ関係者の協力を得て以下の研究を委員会等を組織し、調査研究を行うとともに事務局にて各種通商問題の情報収集とその取り纏めを行った。
本委員会は16年間継続して、WTOパネル・上級委員会に付託された国際間の通商に関わる紛争につき研究を行ってきた。平成17年度は2004年から2005年にかけてWTO紛争解決機関で採択されたパネル報告及び上級委員会報告を中心にその分析・評価を行い調査報告書を作成した。
主 査 早稲田大学大学院法務研究科 清水章雄 教授
副主査 東京大学大学院総合文化研究科 小寺 彰 教授
委 員 9名 委員会開催 6回
アジア諸国・地域のアンチダンピング制度の実態調査を行い、アンチダンピング調査及び発動した措置等につきその内容を分析検討し報告書に取り纏めた。
委員長 東京大学社会科学研究所 中川淳司 教授 委員7名 委員会開催
各国の知的財産関連法令がWTOのTRIPS協定に整合しているかどうか等について分析調査を行い、TRIPS協定が直面する課題の検討、TRIPS協定の見直し、加盟国法令レビューなどの調査・研究を行った。
委員長 一橋大学大学院国際企業戦略研究科 相澤 英孝 教授
委 員 16名 委員会開催 5回
WTO新ラウンド交渉におけるアンチダンピング協定改定の取り扱い状況の把握とわが国の対応策、アンチダンピング措置発動状況と問題点、企業の受けている影響と対応策につき産業界実務経験者による研究会で分析及び検討を行った。
座 長 東京大学大学院 小寺 彰 教授
委 員 10名 委員会開催6回
WTOアンチダンピング協定には迂回防止規定がないため、アンチダンピング協定改定交渉の中で議論される際に、わが国としてどのような規定を盛込むべきかを企業の実務家を交えて検討した。
座 長 東京大学大学院 総合文化研究科 小寺 彰 教授
委 員 9名 委員会開催2回
ITコンテンツの発展に伴いPC等でインターネットを駆使した国際間電子商取引(貿易)が増加している。それに伴い“電子商取引からみた「法例」”の改正に関してPL、一般不法行為、知的財産権、物権などを産業界のニーズ及び取引に参加する消費者保護の観点から国際私法の現代化に関する要綱案について検討を行った。
座 長 古賀総合法律事務所 鈴木五十三弁護士
委 員 9名 委員会開催3回
WTOドーハラウンドはドーハ開発アジェンダが正式名称で、途上国への配慮と支援が重要視されている。わが国も途上国支援の一環としてのキャパシティビルディングには積極的に取り組んでいるが、どのような支援をするのが適切なのかについて、貿易・投資の実態に即したニーズを検討して、キャパシティビルディングのグランドデザインを作成し、報告書に纏めた。
委員長 東京大学社会科学研究所 中川淳司 教授
委 員 5名 委員会開催6回
米国・EUの通商政策に関する情報収集・分析、WTO非農産品関税交渉に係る調査研究、 欧州におけるWTO新ラウンド及び日スイスFTAに係る情報収集・分析、米国の農業貿易政策がドーハラウンドに与える影響、各国のLDC特恵関税供与状況に関する調査、各国の迂回防止制度に関する調査等、わが国産業界が影響を受ける国際通商上の問題につきその法的解釈、運用及び今後の動向等について通商問題専門調査機関、通商法専門弁護士等に調査・助言を依頼し回答を得た。
II.情報及び資料の収集提供事業
@ 次の資料を定期的に入手した。
A 主要国の通商法規及びWTOに関する文献、論文等を収集、整備した。 米国
・官報(Federal Register)
・International Trade Report
・Inside US TradeEU ・官報(Official Journal EC) Canada ・官報(Canada Gazette) Australia ・Australian Customs Notices
B 主要国の通商法の運用につき、関係官庁、内外の学者、弁護士、会員企業、団体と活発に情報及び資料の交換行った。その活動を通じて内外の情報ネットワークの一層の整備に努めた。
C インターネットの積極的活用を図り、ホームページ、電子メールによるタイムリーな情報の提供を目指し、当センターの活動内容・成果の発信、セミナーの案内、海外の通商関連情報の発信・提供等に努めた。
平成17年度は下記の海外調査を行った。
@ 出張者 当センター 岩本所長
A 出張者 当センター 岩本所長 出 張 先 中国(北京) 期 間 平成17年17年4月24日〜4月27日 目 的 北京大学主催WTOセミナー参加及び中国の通商政策に関する現地調査
B 出張者 当センター 岩本所長 出 張 先 韓国(ソウル)/td> 期 間 平成17年4月18日〜4月21日 目 的 Asian WTO Research Network会議に出席、テーマはアジアにおける地域経済統合
C 出張者 当センター 岩本所長 出 張 先 欧州(パリ、エジンバラ,ジュネーブ) 期 間 平成17年 5月 25日〜 6月2日 目 的 EUの通商政策及びWTO新ラウンド交渉への考え方を現地調査及び
平成17年10月の東京でのWTO発足10周年記念事業への関係者の協力要請
並びにエジンバラ大学で開催された地域統合に関するセミナーへの参加
D 出張者 当センター 岩本所長、松本特別顧問
出 張 先 米国(ワシントン、ニューヨーク) 期 間 平成17年8月25日〜9月5日 目 的 米国の通商政策及びWTO新ラウンド交渉への考え方を現地調査及び
平成17年10月の東京でのWTO発足10周年記念事業への関係者の協力要請
並びにエジンバラ大学で開催された地域統合に関するセミナーへの参加
E 出張者 アジア諸国・地域のアンチダンピング制度実態調査研究会委員及び事務局(梅島委員、粟津委員、濱田委員、事務局/公正貿易センター岩本所長、武藤主任研究員)
出 張 先 香港 期 間 平成17年12月13日〜12月18日 目 的 WTO香港閣僚会議関連会議への参加とドーハラウンド交渉に関する情報収集。
F 出張者 当センター 岩本所長
出 張 先 タイ、マレーシア、インドネシア、インド、台湾、韓国 期 間 平成18年1月〜3月 目 的 アジア諸国・地域のアンチダンピング制度実態調査
出 張 先 欧州(ジュネーブ) 期 間 平成18年3月8日〜3月12日 目 的 EUの通商政策及びWTO新ラウンド交渉への考え方を現地調査及びUNCTAD主催の国際会議の打ち合わせ
III.啓発普及活動
米国、欧州関係で、
「アメリカ税関による法令監査の最近の動向」「アメリカ税関・国境保護局による検査・保安プログラムの貿易への影響」「米国・EUの独占禁止政策に関する最近の動向」のテーマで5回
中国関連で、
「中国通商問題に関する最近の動向」「中国の独占禁止法案―その特徴と見通し―」のテーマで2回
アジア関連で、
「韓国の移転価格税制とその対応策」のテーマで1回
日本の特殊関税制度関係で、
「改正独占禁止法と企業実務」のテーマで1回
WTO関係で、
WTO紛争解決システムの役割と課題」「WTOの将来―その課題と挑戦」「WTO香港閣僚会議後の我が国の通商政策」等のテーマで3回
合計>12回のセミナーを開催した。
開催日:平成17年10月25〜27日
1995年に発足したWTOは10周年を迎え、WTO上級委員会委員の発議によりWTO発足10周年記念国際会議を開催した。組織委員会の委員長を谷口安平WTO上級委員会議長、事務局を公正貿易センターが担当し、国連大学国際会議場にて、スパチャイ博士、ジャクソン教授等の著名人をはじめ、アジア、欧米、WTO等から多くの専門家を招聘して、WTO紛争解決、ドーハラウンド交渉、アジア・APECの地域経済統合について熱心かつ有意義な発表と討論を行った。
米国、EU、カナダ、オーストラリア、中国の官報並びに経済産業省の情報等により当センターが把握した対日アンチダンピング情報のリストを毎月発行し、会員に提供した。
JICA(国際協力事業機構)からWTOキャパシティビルディング協力の一環として、途上国行政官を対象とする研修事業を受託し実施した。
@ 研修名 : WTO協定・紛争解決了解の運用
期 間 : 平成18年1月29日〜2月11日
対象国 : インド、バングラデッシュ、パキスタン、サウジアラビア、タイ、中国
A 研修名 : カザフスタン・アゼルバイジャン
期 間 : 平成18年3月13日〜3月24日
対象国 : カザフスタン、アゼルバイジャン 8名
IV.相談・助言事業
対日アンチダンピング調査案件及び措置等について会員企業、団体等にその対応策について助言した。この他、産業界のみならず学界、法曹界、マスコミ等からのアンチダンピング問題、通商問題に関する問い合わせ及び情報・資料提供要請に対して適宜対応した。
各国の法令、アンチダンピング手続への対応、個別産品の現行アンチダンピング税率、法律事務所の情報、主要貿易相手国の官報、当センター報告書、内外の文献等に対する問合わせに応じた。中国のWTO加盟に伴う法令の変更や中国との貿易、投資、知的財産権に関する案件が急速に増加した為、関連する制度・運用に関する問い合わせ、相談が前年度に引き続き多かった。また日本のアンチダンピング調査手続やセーフガード措置に関する問い合わせにも適宜対応した。